サーモカメラは、建築物の断熱性能診断から、電気設備の異常検知、医療分野でのスクリーニングまで、幅広い分野で活用されています。しかし、高性能化が進むにつれて、どのサーモカメラを選べば良いのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。この記事では、2025年4月現在の最新情報を基に、サーモカメラを選ぶ際の重要な判断基準をわかりやすく解説します。あなたの用途に最適な一台を見つけるための羅針盤として、ぜひご活用ください。
はじめに：サーモカメラとは？その基本と応用
サーモカメラは、物体から放射される赤外線を検知し、温度分布を可視化する装置です。人間の目には見えない熱エネルギーを画像として表示することで、異常な発熱箇所や温度差を特定することができます。従来の接触式温度計では測定が難しかった広範囲の温度測定や、動いている物体の温度測定も可能です。
近年では、サーモカメラの小型化・低価格化が進み、産業用途だけでなく、住宅の断熱診断やペットの健康管理、DIYなど、より身近な用途にも広がっています。しかし、用途に合わせた適切な機種を選ばないと、期待した効果が得られないこともあります。
サーモカメラ選び方のポイント：7つの重要判断基準
サーモカメラを選ぶ際には、以下の7つのポイントを考慮することが重要です。
1. 用途を明確にする：何を測定したいのか？
サーモカメラ選びで最も重要なのは、何を測定したいのかを明確にすることです。目的によって必要な性能や機能が大きく異なります。例えば、建築物の断熱診断であれば、広い視野角と高い温度分解能が求められますし、電気設備の異常検知であれば、高温領域の測定に対応できる機種が適しています。
- 建築物の断熱診断: 壁や窓の断熱性能、水漏れ箇所などを特定
- 電気設備の異常検知: 電線、ブレーカー、モーターなどの発熱箇所を特定
- 医療分野: 体表温度のスクリーニング、血流の可視化
- 研究開発: 材料の熱特性評価、製品の放熱設計
- セキュリティ: 夜間の侵入者検知
用途を明確にすることで、必要な測定温度範囲、精度、空間分解能などを絞り込むことができます。
2. 測定温度範囲：低温から高温まで、必要な範囲をカバーできるか？
サーモカメラには、測定できる温度範囲が定められています。測定対象の温度範囲をカバーできる機種を選びましょう。例えば、暖房器具の温度を測定したい場合は、比較的低い温度帯（-20℃～350℃程度）に対応した機種で十分ですが、高温になる可能性がある電気設備の異常を検知したい場合は、より広い温度範囲（-20℃～650℃以上）に対応した機種を選ぶ必要があります。
測定温度範囲が広ければ広いほど汎用性は高まりますが、一般的に価格も高くなる傾向があります。
3. 温度分解能（NETD）：わずかな温度差を識別できるか？
温度分解能（NETD：Noise Equivalent Temperature Difference）とは、サーモカメラが識別できる最小の温度差のことです。NETDの値が小さいほど、わずかな温度差を検知できるため、より高精度な測定が可能です。例えば、建築物の断熱診断では、わずかな温度差から断熱性能の低い箇所を特定する必要があるため、NETDの値が小さい機種が適しています。
NETDの値は、一般的にmK（ミリケルビン）単位で表記されます。目安として、NETDが50mK以下の機種であれば、高精度な測定が可能と言えるでしょう。
4. 空間分解能（IFOV）：小さい物体を正確に測定できるか？
空間分解能（IFOV：Instantaneous Field of View）とは、サーモカメラが一度に測定できる最小の面積のことです。IFOVの値が小さいほど、小さい物体や遠くの物体を正確に測定できます。例えば、電子部品の温度を測定したい場合は、IFOVの値が小さい機種を選ぶ必要があります。
空間分解能は、レンズの焦点距離と検出器の画素数によって決まります。画素数が多く、焦点距離が長いほど、空間分解能は高くなります。
5. 画素数：鮮明な画像を得るために
サーモカメラの画素数は、画像の鮮明さを左右する重要な要素です。画素数が高いほど、より詳細な温度分布を画像として確認できます。特に、広い範囲を測定する場合や、小さい物体の温度を測定する場合には、画素数の高い機種を選ぶと良いでしょう。一般的に、160×120ピクセル以上の画素数の機種が推奨されます。
ただし、画素数が高いほど価格も高くなる傾向があります。用途に合わせて適切な画素数の機種を選びましょう。
6. 機能とソフトウェア：必要な機能が搭載されているか？
サーモカメラには、様々な機能が搭載されています。必要な機能を搭載した機種を選びましょう。
- 画像補正機能: 画像の歪みを補正し、より正確な温度測定を可能にする
- 温度アラーム機能: 設定した温度を超えた場合にアラームを発する
- Wi-Fi機能: スマートフォンやタブレットに画像を転送する
- 動画撮影機能: 温度変化を記録する
- レポート作成機能: 測定データを基にレポートを作成する
また、付属のソフトウェアも重要な要素です。測定データの解析やレポート作成を容易に行えるソフトウェアが付属している機種を選ぶと、作業効率が向上します。
7. メーカーと価格：信頼できるメーカーの製品か？
サーモカメラは精密機器であるため、信頼できるメーカーの製品を選ぶことが重要です。実績のあるメーカーであれば、品質やアフターサポートも期待できます。価格も重要な要素ですが、安価な製品は性能や耐久性に劣る可能性があります。予算とのバランスを考慮しながら、信頼できるメーカーの製品を選びましょう。
購入前に、製品レビューや口コミなどを参考にすることも有効です。
2025年最新サーモカメラ おすすめモデル
2025年4月現在、特におすすめのサーモカメラをいくつかご紹介します。
- FLIR E8 Pro: 高性能なエントリーモデル。建築物の断熱診断や電気設備の点検に最適。Wi-Fi接続機能搭載。
- HIKMICRO Pocket2: コンパクトで持ち運びやすい。DIYやホビー用途に最適。
- Infiray P2 Pro: スマートフォンに接続して使用するタイプ。手軽にサーモグラフィーを体験できる。
上記以外にも、様々なメーカーから多種多様なサーモカメラが販売されています。ご自身の用途や予算に合わせて、最適な一台を選んでください。
まとめ：最適なサーモカメラを選んで、安全で効率的な作業を
この記事では、サーモカメラを選ぶ際の重要な判断基準について解説しました。用途を明確にし、測定温度範囲、温度分解能、空間分解能、画素数、機能、メーカー、価格などを総合的に考慮して、最適な一台を選びましょう。
サーモカメラは、様々な分野で活躍する非常に便利なツールです。適切な機種を選べば、安全で効率的な作業を実現できます。
ぜひこの記事を参考に、あなたのニーズにぴったりのサーモカメラを見つけてください。
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